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(カテゴリー)映画

(ニュースのタイトル)映画 『かいじゅう』が6月29日(土)より順次全国公開

(更新日)2024年06月21日

(この記事について)

家族以外は創作の現場を見たことがなかった、画家・西村一成さんの1年を記録したドキュメンタリー・ムービー。

本文

画家・西村一成 1年の記録

 初めて会ったとき、一成さんは「午前中なら調子がいいから、大丈夫かもしれない」と言った。夕方は苦手らしい。不安になるという。だから最初は「午前中の1時間くらいだけ撮影してみましょうか。無理して絵を描かなくてもいいですよ」そんな約束をして別れた。

 撮影最初の日、一成さんは絵を描かなかった。ただただお互いの好きな音楽の話をした。僕(本作監督・伊勢朋矢)も音楽は好きだが、一成さんはさらにマニアックだった。その日は気に入ったCDを1枚借りて帰った。帰りがけ、一成さんが「次はいつ来るの?」と言ってくれたことがうれしかった。2週間後にまた来る約束をして、その日は帰った。

 2週間後。朝カメラを持って訪ねると、一成さんは縁側でタバコを吸っていた。猫のちくらは、一成さんの側でじっとしながら「なんだコイツ」と、僕の方を見ている。一成さんは ふぅーっとタバコの煙を吐くと立ち上がり、耳栓をしてから、巨大なキャンバスの前に立つ。
長い間黙って何かを見つめている。「何が起きるのだろうか?」僕がカメラを手に緊張していると、突如、一成さんが絵筆を握り立ち上がる。「うぅー」と唸り声を上げながら、アクリル絵の具をたっぷりとつけた筆をキャンバスに叩きつける。目の前になんだかわからない模様が現れた。唸り声とともに、何度も何度も繰り返し絵筆を振るう姿を夢中になって撮影していると……いつのまにかキャンバスには「顔」のようなものが浮かびあがり、その目はじっとこっちを見つめていた。一成さんが家族以外に創作の現場を見せたのは、この日が初めてだったという。

 あれから1年、僕は西村家に通い続けた。午前中1時間だけの撮影は、2時間3時間…と伸びていき、2泊3日で撮影したこともあった。カメラはただただ回り続け、西村一成の日常は1本の映画になった。映画のタイトルは甥っ子がつけた一成さんのあだ名にした。『かいじゅう』


出演

西村一成

1978年生まれ、愛知県在住。

西村一成は甥っ子や姪っ子から「かいじゅう」と呼ばれている。独学で絵を描き始めたのは20歳の頃。自宅でときに唸り声をあげながら、キャンバスに絵の具を塗りたくり、独白記ごとく日々絵を描く。

シェル美術賞、FACE損保ジャパン日本興亜美術賞ほか多数入賞・入選。

描くことについて

僕は日々ひたすら絵を描きつづけている。呼吸し、食べ、排泄し、眠るのと同じようにだ。線は僕の肉体の延長としてうねり、色は僕の精神の明滅を強烈に映し出す。それは世界との直感的な交錯によって瞬発的に繰り出される。描きあげた末に僕は疲れ果てて倒れ込む。そのとき絵は、僕と不可分な、一人の人間のナマの姿だ。しかし決して個人的な表現として完結はしない。人は抗うことのできない天変地異の世界を生き抜いているが、いかに時空的に隔たっていようとも、その波動は今ここに伝わってくる。僕にできることといえば、その波を感受し、祈ることしかない。だから僕の絵の中に彫り出される図像は、祈らずにいられない根源的衝動が形づくる現実だ。どんな状況であれ、人はこの世界を必要としている。僕も日々ひたすら世界を感じつづけている。僕自身と、そして誰かの生(せい)のために。

展覧会開催予定

2024年8月3日(土)〜9月29日(日)
西村一成 絵画展『深海魚、碧海を泳ぐ』
無我苑(愛知/碧南市)

監督・撮影

伊勢朋矢

2008年からフリーの映像ディレクターとして活動。NHK『新日本風土記』『映像記録 東京 2020 パラリンピック』や BS 日テレ『小さな村の物語 イタリア』など、様々なドキュメンタリー番組を制作。 ギャラクシー賞やATP賞、イタリア賞、ニューヨークフェスティバルなど、国内外で評価を受けている。2016年頃からアール・ブリュット作家の映像記録を始め、Eテレ『no art, no life』『ETV特集 人知れず表現し続ける者たち』を制作している。2024年4月に映画初監督作品『日日芸術』公開。プラネタフィルム代表。

音楽

ロケット・マツ

13人編成のアコースティック・オーケストラ、パスカルズ(Pascals)のバンドマスター。 鍵盤ハーモニカ・ピアノ・アコーディオンを担当。 様々な歌い手のレコーディングやライブをサポートし続けている。
1995年、パスカルズ結成。パスカルズは国内外のライブ活動と並んで、舞台、映画、ドラマの音楽を制作。ドラマ『凪のお暇』『妻、小学生になる。』、映画『さかなのこ』『川っぺりムコリッタ』、2024年公開された伊勢朋矢監督の初映画作品『日日芸術』では、音楽のみならず出演もした。2023年、伊勢真一監督によるドキュメンタリー 映画『Pascals〜しあわせのようなもの〜』公開。

 


劇場情報

2024年6月29日(土)から7月12日(金)、新宿 K’s cinema にて上映

2024年8月10日(土)から8月16日(金)、名古屋シネマスコーレにて上映

※8月17日(土) ~ シネマスコーレにて、伊勢朋矢監督作品『日日芸術』を上映


その後、全国各地で順次上映予定。
詳細や予告編は、映画『かいじゅう』公式Instagram をご確認ください。


インフォメーション

映画『かいじゅう』

出演|西村一成、西村純子、ちくら ほか

音楽|ロケット・マツ (パスカルズ)

プロデューサー|牧野 望、伊勢真一
撮影応援|水野宏重
整音|
永峯康弘
音響効果|細見浩三
ダビングスタジオ|
小田 崇
カラーグレーディング山口 登
オンラインエディター森泉洋平
DCP尾尻弘一
監督助手|植木咲楽
制作デスク|加藤明香 
広報|
唯野浩平
宣伝アート|遠藤郁美
デザイン|
森岡寛貴
編集|太田一生
監督・撮影|
伊勢朋矢
制作・配給|Planetafilm

2024年/カラー/5.1ch/101分

映画『かいじゅう』公式Instagram

 

お問い合わせ:
プラネタフィルム(株)
〒150-0043 東京都渋谷区神山町3-3 神山町ハイム2F
E-MAIL:space@planetafilm.co.jp
TEL/FAX:03-6455-3366