(山下完和さんのプロフィール)
山下完和
YAMASHITA Masato
社会福祉法人やまなみ会〈やまなみ工房〉施設長。高校卒業後、様々な職種を経た後、1989 年から〈やまなみ共同作業所〉に支援員として勤務。1990年に〈アトリエころぼっくる〉を立ち上げ、一人ひとりの思いやペースに沿って、自分らしく生きることを目的に様々な表現活動に取り組む。2008年からは〈やまなみ工房〉の施設長に就任。現在、施設利用者は約90名。
第七のとびら
共に働く人たち
利用者ファーストではなく
スタッフファーストな場所
僕はスタッフが働きやすい場所を作りたい。「いやいや、利用者ファーストでしょう」と笑われる。
けれど、僕はスタッフファースト。〈やまなみ工房〉で働いて良かったと思えるようにしようと日々考えています。だって、施設利用者にとって、一番大切な存在がスタッフなんですから。
スタッフの満足度が高ければ、余裕が生まれ、利用者のことを深く考えて行動します。「この人はどんなことが好きなんだろう」「どういう場所が居心地が良いだろう」って。
結局、スタッフファーストこそが、利用者ファーストにつながると思う。
第八のとびら
関係性の中で
アートとは
生まれたものを
大切にする気持ち
〈やまなみ工房〉ではたくさんの作品が生まれます。
だけど、僕はアートを見抜く力が一番ない伴走者かもしれない。だから、無理に作品の評価をしようとは思いません。作品を大切にしておけば、いつか人目に触れるチャンスがあるでしょう。
小さい頃に描いた絵を、家族が大切に取っておいてくれたら嬉しい気持ちになるじゃないですか。僕にできることはその人から生まれたものを、その人と同じぐらい愛情を持って大切に扱うこと。それだけです。世の中にはいろんな価値観のある人たちがいますから、届け方にもいろんな方法があります。
美術が好きな人には展覧会がいいでしょう。ファッションが好きな人には服にしたらいいかもしれませんね。多様な届け方をすれば、若者にも、福祉に興味がない人たちにも届きます。作品をいろんな媒体に変えることで、作品を作りだした人と社会との接点を作る。
〈やまなみ工房〉がそんな「ツール」になればと思います。そこで大切なものは、作りだした人たちに対するリスペクトです。
売り上げ重視でチープなものを大量に作ったり、粗末に扱うことがあってはならない。作品や作家との接点を作れば、作品とその人との関係性がつながっていく。
それが僕たちにできる、もっとも大切なことだと思う。