ワークショップ・シリーズの第2回目はせんだいメディアテーク オープンスクエアで開催しました。ダンスと演劇の分野で活躍し、独自の台詞まわしやグルーブ感のある演出が特徴の矢内原さんを講師にお迎えし、演技や演出の手法を学びながら、障害の程度や種別に関係なく、表現の面白さを体験するワークショップを行いました。
ワークショップは10:00-12:00、14:00-16:00の2回に分けて、入替制で行われました。開催地である仙台市を中心に、岩手県、山形県など遠方からも参加者が集まりました。
まずはウォーミングアップ。16カウントで床に下がっていったり、起き上ったりしていきました。自分がどういう風に起きて、下がるのか、身体のどの部分を使っているのか意識していくと、徐々にそれぞれ人と違った動きになっていきました。
その後、1人ずつ舞台の上を歩いていきました。この時、自分と他者との関係性を意識して、どう立ち止まったら空間が面白くなるか、どういうリアクションをとるか考えるように、と矢内原さんから指導されました。すると、他者に対して手を振る、顔を覗き込む、距離をとって離れるなど、様々な面白い表現が生まれました。
次に演技をするうえで必要となる台本作りにチャレンジ。
ペアを組み、矢内原さんが書かれた「街にひそむ」という台本を、カットアップという技法を用いて独自の台本に作り変えていきました。
カットアップとは文章を一度バラバラに切り取り、それを組み合わせることで新しい文章にしていく技法です。台本の中から自分の気に入った単語や文章を切り取り、ペアの人と相談しながらA3の白紙に言葉を貼り付けて、文章を組み立てていきました。
台本が出来上がり、一組ずつ発表。交互にセリフを言ったり、アクションをつけたり、2人で声をあわせたり、自分たちで表現方法を考えて発表しました。組み合わせた言葉も「嘘」「信じた色」「借りてきた街」など、もとの台本とはまた違った興味深い表現がたくさん生まれた発表となりました。
さらに4~5人くらいのグループを組み、自分たちが選んだ言葉のシチュエーションを考え、自由に表現することにもチャレンジしました。ジャンプしたり、会場をかけまわったり、セリフを朗読したり、と思うままに表現していき、それは舞台の一シーンを観ているようでした。
ワークショップ終了後、講師の矢内原美邦さんから感想をいただきました。
――障害のある方も参加する演劇のワークショップはいかがでしたか?
障害のある方とは初めてでしたが、既成概念というか、もともと持っている常識というものを私たちはなかなか振り払えないのですけど、それ自体を振り払って表現しようとするものが見えて、色んな可能性を感じました。
――このワークショップで、障害のある方が自分の事を伝える機会になったと思いますか?
はい。障害者であろうと健常者であろうと、その人が好きな言葉っていうのがあって、その言葉を選んで、表現するということがとても重要です。例えば、ネガティブな「罪」とか「罰」っていう言葉をすごくポジティブに捉えて話をしていました。逆にその「罪」とか「罰」っていう言葉を見たら気分が悪くなるという人たちもいました。「罪」っていう言葉の広がり方が一つだけではなく多様で、ただ一つの言葉なのに、それだけの多様性があるというのは、大きな発見でした。
「言葉を言葉として扱わず、言葉からイメージを汲み取り、そのイメージをどう伝えるかを演劇の中では考えるようにしてください。」
ワークショップの最後に、矢内原さんから参加者へ贈られた言葉です。
参加者が自由にシチュエーションを変え、表現を変え、気持ちを変えていく姿から、表現の面白さと創造の可能性を感じた1日でした。