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(カテゴリー)お知らせ

(ニュースのタイトル)2023年度 True Colors Festival事業について、効果検証報告書を公開!

(更新日)2024年07月12日

(この記事について)

True Colors DANCE 2024にデロイトトーマツグループの3名のコンサルタントが伴走。関係者を集めたワークショップ形式でのロジックモデルの策定からアンケート設計、期中・期末のインタビューまでをプロボノで実施。プロジェクト参加者に起きた気づきを分析しました。

本文

2023年12月から2024年3月まで計11回のリハーサルを経て、3月7日のNHKホールの舞台で新しい学校のリーダーズとの本番を迎えたTrue Colors DANCE 2024
車いすユーザー、ろう者、ダウン症等を含む多様な学生たち26名が参加した同プロジェクトは、学生たちに多様な背景を持つ同世代と一緒にひとつの作品をつくることを通じて、自分とちがう特徴をもったさまざまな他者とのチームワークの面白さに気づいてもらうことや、ちがいを超えて他者とつながり合うことができる成功体験を得てもらいたいと考えて実施したものです。学生たちがまぜこぜになりながら一つの舞台制作に取り組む、True Colors Festivalの新フェーズのパイロット事業と位置づけて、実施しました。

参加学生たちやメンターたち、保護者のみなさんに「気づき」を引き起こすことを目指す同プロジェクトには、立ち上げ時からデロイトトーマツグループの永井希依彦さん、山﨑 遥さん、渋沢早弥さんに伴走いただき、私たちがもたらしたい「気づき」の具体化・精緻化、気づきをもたらすプロセスの構造化、プロジェクト期間中や終了後に「気づき」を測定するためのアンケートやインタビューの設計、インタビューの実施までを含めた広範かつ困難な一連のタスクをプロボノでご協力頂きました。報告書としてのとりまとめについては、タメンタイ合同会社の山本 功さんに行っていただきました。

また、レポートの中では、True Colors DANCE 2024の成果披露の場でもあった、True Colors SPECIAL LIVE 2024の来場者アンケートの分析も行っていただきました。 このレポートの内容を踏まえて、True Colors Festivalでは2024年度以降も、共創体験を通じて学生たちにさまざまな気づきをもたらすプログラムを展開してまいります。

2023年度 True Colors Festival事業 効果検証報告書はこちらからダウンロードできます。

注:スライド85「APPENDIX3:期中・期末におけるアンケート及びヒアリングデータ」のExcelファイルデータは公開しておりません。


報告書の完成に寄せて

アートプロジェクトに限らず、多くの社会的なプロジェクトの現場では、「対象とする人たちに対して所期の変化を起こすことができたのか」ということをじっくりと検証し、振り返るような余裕を持つことが難しい状況にあるのではないかと想像します。私たちもプロジェクトを走らせながら次期のプロジェクトを仕込むという仕事の仕方が常態化している中で、果たしてPDCAのサイクルをきちんと回すことができているかと考えると、心もとない状況がありました。そのような中で、アートプロジェクトや社会的インパクト評価に豊富な経験を持つコンサルタントの永井さん、山﨑さん、渋沢さんに伴走いただいたことは、この報告書の完成を待たずに、多くの気づきを私たちにもたらしてくださったと感じています。

私にとっての1つ目の気づきは、そもそも私たちはターゲットとする人たちへもたらしたい変化について解像度を十分に高めないまま、プロジェクトを走らせることが往々にしてあるのではないかということです。2023年12月にコンサルタントのみなさんのファシリテーションの下で行ったワークショップには、委託先のODORIBA社のみなさま、メンター役のSOCIAL WORKEEERZのダンサーのみなさま、主催者である当財団のメンバーが入った総勢十数名が参加しました。そこで、プロジェクト実施後の学生たちに至ってほしい心理状況やそこに至るためにたどるであろう心理的経過を各々がことばにしてみたところ、想定が十人十色に近い状況にあることが分かりました。この議論に一定の時間と労力をかけたことで、その後、実施上の様々な工夫を整理していくための基盤になりました。

2つ目は、私たちがプロジェクトの成果を語るときに語っていることは、実は所期の変化としての主産物ではなく、実施前には予期しなかった変化としての副産物であることが多いのではないか、ということです。これは1つ目の気づきとつながる部分がありますが、プロジェクトの主産物=「プロジェクトを通じてターゲットにどんな変化をもたらすのか」の解像度を十分に高めないままとにかく動き始めてしまうがゆえに、主産物と副産物の区別をつけること自体が難しいということもあるかもしれません。事を起こしたら、程度の差こそあれ、だれかに何らかの変化が起きるのは当然ですが、一見良さそうな変化であれば、それらを全てひっくるめて成果として捉えて、語りたくなるのは実施者としての性(さが)だと思います。しかし、プロジェクトということばが、未来に投影する特定のビジョンに向かって進むことを意味していることを踏まえれば、また、社会への説明責任を果たそうとすればなおのことですが、プロジェクトの主産物を明確化し、主産物を生み出せたかどうかでプロジェクトの評価をするということが実施者が持つべき節度であると改めて感じました。

3つ目は、月並みですが既述の1つ目や2つ目の点をしっかりと行う上で、「伴走者」の存在が重要であるという点です。実施者の中でも、現場に深く携わる人ほど、現場で起きるさまざまな物事、さまざまな変化にさらされます。その結果、実施者側にも次第に変化が起き、それが事を起こすことの醍醐味にもなります。一方で、その変化と共に実施者側の視点がずれてしまったら、所期の変化=プロジェクトの主産物を生み出すことは困難になります。プロジェクトの推進には、「私たちはそもそもこれを目指していたのではないか」という視点の調整を働かせながら訂正を行うことが常に必要であり、実施者側の中でも、現場から少し離れたところに立ち、伴走している人の方がそうしたことを行いやすいのでは、と想像します。こうした伴走者は必ずしも効果検証を担う人である必要はなく、事業のプロデューサーや資金の拠出元であることもあるでしょう。良きプロジェクトは良き実施者と良き伴走者を持つということなのだと思います。

今回の効果検証を通じて、デロイトトーマツグループの永井さん、山﨑さん、渋沢さんが良き伴走者として半年間、共に走ってくださり、以上のことに限らない多くの「気づき」を私たちにもたらしてくださったことに改めて感謝申し上げます。

(一財)日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 事務局長 青木 透


インフォメーション

日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS
2023年度 True Colors Festival事業 効果検証報告書

  • プロジェクト効果検証:
    山本 功(タメンタイ合同会社(TAMENTAI G.K.)|アートマネージャー・代表社員)
    永井希依彦(デロイトトーマツ リスクアドバイザリー合同会社|マネージングディレクター)
    渋沢早弥(デロイトトーマツ リスクアドバイザリー合同会社)
    山﨑 遥(デロイトトーマツ リスクアドバイザリー合同会社・明治大学大学院経営学研究科)
  • 発行日:2024年5
  • 発行元:タメンタイ合同会社

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一般財団法人 日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS